サンジェルマン博士の事件簿#1 ~妖精の神隠し~ 第3話(了)

ふむ、確かに近頃このレンドアで突然姿を消す者が増えたという話は聞くようになりましたね…

その事件については私ごときが何か知っていることはないのですが、貴方のいう【ようせいの粉】が手に入らなくなった時期、そして神隠しが起きるようになった時期より少し前位からでしょうか…

関連性についてはどうとも言えないのですが、【フェアリースパーク】と呼ばれるお酒が密かに流行しだしたのです。

そしてそれは路地裏の露店などでしか扱っていない。

口コミで聞いた話ですがね、非合法の香りが漂ってきませんか?

その名前もね…関連性が気になるでしょう?

 

 

【フェアリースパーク】いかにも【ようせいの粉】に関連性がありそうな名前の新しいカクテル。

それが裏で流通しているらしいとの話を聞いた私はその件を追いかけてみることにした。

実際に、飲んだことのある者はいないのか、もしくは…売ってる場所を知っている者などがいないのか…

私は町の荒くれものなどに話を聞いてみるが情報はまったく手に入らない。

知ってる様子ではあってもその名前が出ると口を閉ざしたり、適当にごまかして逃げる者ばかり。

露店などでは扱ってる様子も見えない。

おそらく…決まった合言葉などを知ってる者でないと売らないなどの対策を講じているのだろう。

 

(手ごわい…)

それが私の印象だった。

 

しかし、調査を続けていると奇妙な話を耳にする。

丁度そんな事件が起きるようになった頃、少し頭のおかしな少年が現れるようになったという。

その少年は「自分は立派なオーガの青年で目が覚めたら子供になっていたんだ」と訴えるらしい。

だが、そんなことあるはずないと周囲は奇異の目で少年を見、頭がおかしいヤツと無視しているとのことだ。

 

これは何か強い関連性があるに違いないと判断した私は早速その少年を探す。

頭のおかしい少年という噂を辿ってみると思いのほか簡単に彼と会うことができた。

 

 

見た目は子供、中身は…?

「わかった!あんたを信じて俺の身に起こったことを話すよ!」
「わかった!あんたを信じて俺の身に起こったことを話すよ!」

 会うことはできた…

とは言っても、話を聞くことは少し大変だったんだ。

何より彼はこれまでウソツキ呼ばわりをされ続け、あげく頭のおかしなヤツと噂され続けてきたのだ。

人間不信になっていても仕方ない。

しかし、私は今回起きてることの危険性などを話し、彼の言うことを信じると説き続け…ようやく心を開いてもらうに至った。

 

彼の体験はこうだった…

 


【少年(オーガの青年)】

俺は船着き場から海を見るのが好きでね、その日も同じように海を眺めていたんだ…

そう、場所は荷下ろし場のあたりだったかな。

そうやってのんびりしていると倉庫の裏の方と普段見ないような船を往復する人影を見てしまったんだ。

俺はなんだろう?程度に思い大して気にも留めていなかったんだけどね…

それがいけなかったんだろう、気づいたら向こうの方から黒い服を着た大男達が大勢やってきて俺を取り囲んだんだよ。

オーガの彼が見て大男というのだから相当な巨漢達だったのだろう。

それが大勢で取り囲んだというのだからいかな力自慢のオーガ族でも一人ではどうしようもないはずだ。

そうして、彼は取り押さえられ、倉庫の中へと連れていかれたという。

そこで何かこれまで飲んだことのないような飲み物を強引に飲まされたという。

しかもコップ一杯とかジョッキ一杯なんて話ではなく、飲んだものが食道まで溢れるくらいに大量にだそうだ。

そして気を失ったらしい。

 

掴んではならない尻尾…

彼はそのまま置き去りにされた…のではなく、ご丁寧に別の場所へと移されたようだ。

足がついてはめんどうだからであろう。

運び込まれた倉庫とは別の倉庫というよりは物置で目が覚めた彼は今のように【子供の姿】へと変えられていたらしい。

 

『間違いない…これはパルプンテだ…』

その話を聞いた私はつぶやく。

そして確信した。ようせいの粉が消えたこと、神隠し事件、フェアリースパークという謎のカクテル全て繋がっていると。

 

パルプンテ現象、アストルティア錬金術におけるこの現象は職人にとって嬉しい場合もあり頭を抱えてしまう場合もある特異現象で本来定着させたい効果とは異なる想定外の効果がついてしまうことで、これを古代に失われた予測不明の呪文【パルプンテ】の伝説になぞらえてこう呼ばれるようになったものである。

 

彼を捕らえた謎の集団は確実に【ようせいの粉】を用いてフェアリースパークを作っているのだろう。

そしてそれは規定量以上のようせいの粉を用いており、酒というより中毒性の高い麻薬というところだと想定される。

おそらくはランプ錬金における【幻惑ガード】【封印ガード】などなどのレシピをアレンジすることで若干の服用により幻覚を見たり幻聴が聞こえるなどの効果が出るようになっているのではないかと考える。

それらを流通させて中毒者を増やすことでボロ儲けしようと企んでいるのだろう。

そして…これは錬金の応用だ。

つまり、パルプンテが起こることもある。

服用した際に通常想定された効果を得られるレシピとは異なる効果が出ることもあるだろう。

そういう不思議なところが中毒者にはたまらなくなるかもしれない。

 

彼の身に起きた現象はパルプンテ。

通常闇酒場で秘密裏に提供されている分量ですら人体に悪影響のある量のようせいの粉が含有されている。

それを死んでもおかしくないくらいの量を飲まされたのだ。

通常考えられないような効果が起きてもおかしくない。

パルプンテにより子供の姿になってしまったというわけだ。

そして思い出して欲しいのは【ようせいの粉】の効果。

各種調合によってできあがる薬の効果を永続的に武具へと定着させるために使われる。

そう、【定着】だ。

パルプンテによっておきてしまった身体の子供がえり…それが定着してしまったのである。

 

これは相当な大事件だと思う。

このまま広がってしまったら魔王などいなくとも人の手でアストルティアが崩れてしまう。

そう、魔物を改造して兵器として売りさばいていた闇商人達が暗躍した時のように…

…と、そこまで考えて私は違和感を覚える。

あの時はレンドアの市長が事件が大きくならないうちに止めようと動いていた。

今回は…動いている様子はない、ゆえに討伐依頼本部も動きがイマイチだったのかもしれない。

なぜだろう?

 

妙な気持ち悪さを覚えて考え込んでいると彼が口を開いた。

そういえば、あの黒服の男たちに連れ込まれた倉庫の中に女性がいたのを覚えている。

確か種族はウェディで…うーん、どこかで見覚えがあるんだよね・・・

 

『・・・・・!』

繋がった…表から裏までアストルティアの経済に通ずるウェディと言えば思い当たるのは彼女だ。

なるほど、それはいかなレンドアの市長といえども手を出すことはできないだろう。

私もよく知っている。錬金石の研究の件で世話になっているからな。

錬金石の精製方法のことを考えれば…あの組織ならやりかねないことだとも納得する。

しかし、あくまで経済のコントロールを重視しているだけにアストルティアを崩壊させることはないだろう、ギリギリのラインでバランスを取るはずだ。

そして【ようせいの粉】の品薄も間もなく解消されることだろう。

このまま続けばさすがにアストルティア中で問題となるからな、今回の件はちょっとした手違いだろう。

 

(この件はもう…これ以上関われない…)

そう、下手に追及したらこちらの命がないのだ。

アストルティアにもともと存在しなかったことにされる可能性も高い。

神隠しにあった連中はもしかしたら…深入りし過ぎたのかもしれないな…

 

かつて愚かにもかの組織を相手取り戦いを挑んだ冒険者達が存在したという。

そしてそのほとんどが惨敗した。

そんな逸話が残っている。

そしてアストルティアにはこんな言葉が残った。

「ゴールドこそ正義」

「アストルティアはカネトルティア」

などと…

 

もやもやとしたものは残るが…私の調査はここで終了だ。

この件については討伐依頼本部へしっかりと話しておくことを少年(オーガの青年)に告げ私はその場を後にした。

討伐依頼本部へは誰が関わっているかを伝え、これ以上は関わらない方が良いと話すつもりだ。

被害者の彼に関しては呪術的な変異ではないため、シャナクでも戻すことはできず奇跡にすがるほかないだろう。

せめて…フェアリースパークというものが不完全な代物で長時間経過すれば毒が抜けるように元に戻ることを願うのみだ。

 

世の中には知らない方がよいこともある…今回の事件はそういう類のものだ

 

アストルティア異聞録

サンジェルマン博士の事件簿#1 妖精の神隠し

~了~

 

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【ハカセ】

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